「負荷試験とは何か」「毎年実施しないといけないのか」など、非常用発電機の負荷試験に関するよくある質問をまとめています。
非常用発電機とは、非常事態が発生して停電が生じた際に、電力を供給する装置のこと。スプリンクラーなどの防火設備のほか、医療器具、エレベータなどに電力を供給するものがあります。現在、国内には防災用、一般停電用を合わせて約130万台の非常用自家発電機が設置されていると言われています。
負荷試験とは、平常時に意図的に負荷をかけて非常用発電機が正常に稼働するかどうかを確認するための試験です。各施設に設置された非常用発電機は、火災や地震などの万が一の際に電力を供給するもの。スプリンクラーや消火栓などの消防設備に電力を供給する非常用発電機が、いざというときに稼働しなければ意味がないだけでなく、大切な人命に関わります。
実負荷試験は、実際に負荷をかけて発電を行って点検するものであるのに対し、無負荷試験は、エンジンをかけて空ふかしをするだけの試験です。非常用発電機の負荷試験では、非常時の運用に近い状態で点検することが望ましいため、負荷試験を行うことがおすすめです。
実負荷試験では、実際に施設に設置されている非常用発電機に負荷をかけて点検を行います。容量の大きな電力を必要とするため、停電が生じることが一般的です。模擬負荷試験は、非常用発電機と模擬負荷試験機を接続して負荷試験を行うものであり、短時間かつ無停電で点検を実施することができます。
消防法により年に1回の負荷試験が義務付けられています。また、30%以上の負荷をかけて30分以上運転することも必要。これは、正常に稼働するかどうかに加えて、堆積されたカーボンの燃焼排出により、機器の破損や異常などを防ぐためです。
定期的な点検を行わないと非常時に正常に作動しない可能性があります。また、法令で義務化されているため、違反すると管理会社または管理者、管理担当者に罰則(罰金30万円~1億円など)が課せられます。
法令により1年に1回、負荷試験または内部観察等による点検を実施しなければならないとされています。ただし、現在では運転性能の維持にかかわる予防的な保全策を講じている場合は、6年に1回の実施に延長可能。とはいえ、機器点検や予防的な保全策は毎年行わなければなりません。
非常用発電機の負荷試験は、専門的な知識や技術が必要となる危険を伴う作業となります。そのため、消防設備士などの専門資格を有するスタッフが在籍していることが重要。また、点検時に修理やメンテナンスが必要となる可能性があるため、ワンストップで全てに対応している業者を選ぶようにするといいいでしょう。
そもそも非常用電源の負荷試験は、消防法において総合点検として位置づけられており、消防設備士あるいは消防設備点検の資格を取得していなければ負荷試験を行えません。そのため、無資格者が負荷試験を行うことは不可能です。加えて非常用発電機は自家用の発電設備にあたるため、自家発電設備の点検や整備に関する知識と技術を持つ自家発電設備技術者が負荷試験を行うよう義務付けられています。
非常用発電機の負荷試験にかかる費用相場は1回あたり15万円~50万円ほど。非常用発電機の容量や設置場所によって費用が異なり、20kWA以下であれば15万円~20万円ほど、230kWA以上なら30万円~50万円ほどかかると考えておくと良いでしょう。費用は業者によっても異なるため、複数の業者で相見積もりをとるのがおすすめです。
無負荷試験とは発電機に負荷をかけずに点検を行うことですが、エンジンの空ふかしをしているような状態ですので、発電機の実際の運転性能を確認することはできません。無負荷試験を行ったところで「いざというときに非常用発電機が本当に使えるか」を判断できないのです。
そのため、非常用発電機の点検は負荷試験で行う必要があり、30%以上の負荷をかけた試験(運転)が推奨されています。
無停電電源装置(UPS)と非常用発電機では、電力の供給方法や連続使用可能時間、供給できる電力量などが異なります。
停電時や瞬電時に蓄電した電気を使って電力を供給してくれる無停電電源装置(UPS)は、30分~1時間といった短時間の使用に向いています。しかし非常用発電機はエンジンを回す動力で発電するため長時間の使用が可能です。
また、無停電電源装置(UPS)は供給できる電力量が少ないため、パソコンなどのコンピューターを正常にシャットダウンするまでに使用するのがおすすめ。長時間の停電時や防災装置の作動などには非常用発電機が適しています。
低圧電気は(10~60A)は一般家庭やオフィスなどで使われていますが、高圧電気は工場やビル、商業施設などで使用されています。
低圧電気の試験ではまず5~20%までの負荷を少しずつかけ、黒煙状態を見ます。その後負荷を30~100%までかけて運転状態を確認し、10%・20%・30%の出力ごとに電圧や電流の測定を行う流れです。
高圧電気も低圧電気の試験と同様の流れで行うものの、高圧電気の試験ではトラックに試験機を積んで試験を行う必要があります。そのため、高圧電気の試験ではトラックを停めるスペースを確保しておくことが大切。また、現場調査をしたうえでケーブルの養生なども実施します。
発電機が安定して出力できる電力のことを定格出力といい、自家発電設備の定格出力が加圧送水装置の出力を上回ることでスプリンクラーや消火栓が稼働し、消火活動が可能となります。
そのため、定格出力が下回ると消火用の設備をはじめとする生命活動や移動に必要な装置が動かず、二次災害につながりかねません。事実、2011年の東日本大震災時に正常稼働しなかった自家発電機のうち、約70%が点検不備によるものとされており、年1回の非常用発電機の定格出力確認を徹底する必要があるといえます。
潤滑油や冷却水を交換しただけでは、内部点検を行ったことになりません。
非常用発電機の点検項目には「潤滑油や冷却水を必要量抜き取り、成分分析を行って異常がないことを確認する」といった内容があります。そこで「抜き取り検査をしなくとも、潤滑油や冷却水を交換してしまえば良いのでは?」と考えてしまうかもしれません。
しかし点検の目的は、非常用発電機の内部異常の確認です。潤滑油や冷却水を交換するだけでは成分を分析できないため、交換のみでは内部異常がないか確認できたことにはならないのです。
負荷試験依頼の際に依頼すれば、燃料の補充にも対応してくれますが、「軽油のみ」「軽油・重油ともに可能」や「燃料の実費で」「希望の補充量に応じて」など、燃料の種類や料金については各業者によって対応が異なっているようです。
非常用発電機の消耗品には以下が挙げられます。消耗品は使用頻度に関わらず経年劣化してしまうため、適切な時期に交換する必要があります。
非常用発電機が安定して稼動できる年数は20年程度といわれています。たとえば制御機能は製造から15~20年ほどで不具合が生じる可能性が高まります。
非常用発電機はビルの屋上などに設置されていることが多く、入れ替えにはクレーンを使って行うことがほとんど。そのため徹底した安全対策が必要です。たとえば非常用発電機の入れ替えを行う場所が人通りの多い場所である場合、安全対策のほか車両通行止めや交通規制、近隣住民への周知なども行う必要があります。
また、業者によってはクレーンの楊重量を下げるため、既設の発電機を分解して搬出することも。新しい発電機は分解したまま搬入し、現地で組み立てを行います。
非常用発電機の更新は20年が目安ですが、設置当初の20年前と比較して周囲の環境が変化していることが多いでしょう。たとえば設置当初にはなかった建物や電柱があるなどのケースも。そのため入れ替え時に障害となるものがないか確認しておきます。
また、消防法の改正によって非常用発電機の必要容量を求める計算式が変更されており、新しい非常用発電機に必要な容量を確認しておくことも大切です。
非常用発電機の耐用年数には、「税法上の法定耐用年数」と実際に使うことができる「国土交通省官庁営繕所基準での耐用年数」という二つの基準があります。
経理上の減価償却を主眼とした「税法上の法定耐用年数」は15年と定められており、一方で「国土交通省官庁営繕所基準での耐用年数」では、メンテナンスをしながら使い続けることで30年という耐用年数が規定されています。
ただし、屋外や海岸などの設置環境の場合、風雨や塩害によっては腐食が進みやすいことから30年の使用は困難といえ、また耐用年数を超過している非常用発電機であれば補修部品が入手できずに修理ができないといった事態も起こりうることも想定しておく必要があります。
これまではディーゼル非常用発電機とガスタービン非常用発電機、どちらの自家発電設備に対しても負荷試験が必要とされてきました。
ただし、その後の実機検証や実態調査の結果、ディーゼルエンジンへの負荷試験での機械的及び熱的負荷とガスタービンエンジンに対する無負荷運転とで差が見られないことがわかっています。
またガスタービン発電機の場合、排気系統などの未燃燃料の蓄積がほとんど発生しないことから、平成30年6月1日施行の消防法改正により、原動機にガスタービンを用いる自家発電設備については、負荷試験が不要となっています。
非特定用途防火対象物の点検報告の期間は3年に1回とされていますが、予防的な保全策を講じていることを示す書類は直近のもので問題ありません。
また、報告する年と運転性能に係る点検を実施した年が異なる場合は、点検票の備考欄に点検の最終実施年月を記載し、直近に講じた予防的な保全策を示す書類を添付すれば、「運転性能」欄の点検結果の記載は不要となります。
コンテナタイプのような移動型の負荷試験装置です。小型・軽量で可搬性に優れており、また有害な負荷抵抗水は一切使用しないなど取り扱いも容易なことから、発電装置および無停電電源装置(UPS)などの負荷試験を安全・無公害で行なうことが可能となっています。
消防法における非常用電源には4種類あります。
非常用発電機には発電だけでなく、寒冷地や高高度といった導入環境に応じた特殊な仕様が求められる場合があり、以下のようなオプションも用意されています。
非常用発電機の長時間運転は、法的には2時間以上が一般的とされていますが、3日~1週間といったように数日間の連続運転の場合、それに応じた燃料貯蔵量が必要になります。
指定数量以上の燃料を貯蔵すると危険物取扱所として規制される可能性があるので注意が必要ですが、地下タンクでの貯蔵であれば法規制はそこまで厳しくないといわれています。
一般的に周辺温度が10℃であれば特別な対策は不要ですが、5℃以下の環境ではヒーターを搭載させて保温する必要があり、またラジエータの凍結防止も併せて行なう必要があることから、特殊仕様の非常用発電機が求められます。
発電機は150mまたは300m以下の場所に設置することが前提条件となっており、それ以上の高度に設置する場合は5~10%の能力低下が起こる可能性があることから、事前に高高度に対応できるだけの能力値を設定する必要があります。
非常用発電機の多くは高効率な放電が可能なREH蓄電池を採用していますが、寿命が1~2年ほど長いMSE蓄電池を採用する場合があります。
ただし、MSE蓄電池には倍程度の設置スペースが必要などのデメリットもあるようです。
消防点検報告書(消防設備点検報告書)とは、機器点検や総合点検の結果を記載した報告書です。所轄の消防署まで届け出る必要があり、消防点検報告書を提出しないと点検報告義務違反として消防法により罰せられる可能性があります。なお、消防設備には非常用発電機も含まれているため、点検報告の義務があります。
また、消防点検報告書を提出する際に負荷試験や内部観察を行わない場合は、非常用発電機の予防的保全策を行い、実施したことがわかる書類を消防点検報告書に添付します。
なお、非常用発電機の負荷試験については実施周期が見直されており、毎年予防保全策を行っている場合に限り、負荷試験実施あるいは内部観察を6年に1度行えば問題ないことになっています。
ただし、6年毎の負荷試験あるいは内部観察実施までの5年間は毎年点検を行う必要があります。そのため、非常用発電機は毎年「負荷試験」「内部観察」「予防的保全策」のいずれかを実施するということになります。予防的保全策では1年毎の予熱栓や点火栓などの確認のほか、潤滑油や部品等の交換などを行います。
ばい煙発生施設とは「ばい煙」を発生する施設のことです。大気汚染防止法で定められており、33項目に分け一定規模以上の施設をばい煙発生施設と定義しています。
具体的には、「ボイラー」や「加熱炉」、「溶解炉」、「乾燥炉」、「燃焼炉」、「廃棄物焼却炉」などがばい煙発生施設にあたります。
また、ばい煙についても大気汚染防止法で定義されており、「燃焼等に伴って発生する硫黄酸化物」「ばいじん(いわゆるスス)」「有害物質」が該当します。なお、有害物質としては「カドミウム及びその化合物」「塩素及び塩化水素」「弗素、弗化水素及び弗化珪素」「鉛及びその化合物」「窒素酸化物」が定義されています。
非常用発電機においても、
上記に該当する場合は都道府県知事等への届出が必要。さらに排出基準もかけられており、定期的に測定する義務を負います。
BCP(Business Continuity Plan)とは、事業継続計画のこと。テロや自然災害、ウイルスの流行、システム障害や情報漏えいなどの不祥事といった危機的状況下に置かれた時でも損害を最小限に抑えるため、企業では重要業務を継続・早期復旧できるような方策を用意します。
BCP対策が重要視されたきっかけは、2011年に発生した東日本大震災だといわれています。日本では以前からBCP対策に関する議論が進められていましたが、大震災によって多くの企業が被災・倒産しました。以降も日本では豪雨やウイルス流行に見舞われ、緊急事態時の対応策であるBCP対策の重要性が注目されています。
なお、BCP対策は防災対策と混同されがちですが、BCP対策とは「企業の事業継続や復旧」に重点を置いたもの。防災対策は「災害を未然に防ぎ、人や建物・資産などを守る」ことに重点を置いていますから、意味が異なります。
自然災害やシステム障害などが生じた場合にどんなリスクがあるかをリストアップし、その影響や被害を踏まえた対策を講じます。自社の中核を担う事業など優先順位をつけ、明確な方針のもと策定しましょう。マニュアルを作成し、社内全体で共有することも大切です。
PR TIMESで紹介された記事によると、世界の発電機市場の評価は2019年で約223億米ドル。今後も更なる成長が予測されており、非常用発電機を導入する企業や施設は増えていくことでしょう。
また、防災用自家発電装置の設置状況はここ数十年増加傾向にあり、防災の観点から各事業所や福祉施設、病院などでも導入することが多くなっているようです。
非常用発電機に専門特化し、負荷試験をはじめとする法令点検で全国対応可能な3社*を紹介します。