非常用発電機は、停電時に設備や人命を守るための重要な設備です。いざというときに確実に稼働させるためには、本体の点検だけでなく、「燃料の管理」も欠かせません。
この記事では、非常用発電機に使用される主な燃料の種類や特徴について解説します。
建物に設置される非常用発電機の多くは、ディーゼルエンジン式が採用されています。そのため、使用される燃料も「軽油」または「A重油」が中心となります。
小型の可搬式発電機ではガソリンが使われることもありますが、建物に設置される非常用発電機においては、引火性や安全性、保管のしやすさといった観点から、ガソリンが採用されるケースは一般的ではありません。
軽油はガソリンスタンドで入手できるため調達しやすく、比較的扱いやすい燃料です。一方で、A重油は軽油に近い性質を持ちながらも、コスト面で優位になる場合があり、備蓄を前提とした運用に適しています。
それぞれの特徴を理解したうえで、施設の運用方針や調達体制に応じて選定することが重要です。
軽油は、非常用発電機の燃料として広く採用されている代表的な燃料です。最大の特徴は、ガソリンスタンドで入手できるという調達のしやすさにあります。災害時であっても比較的入手ルートを確保しやすく、緊急時の対応力という点で大きなメリットがあります。
また、軽油は引火点が比較的高く、ガソリンに比べて取り扱い時のリスクが低いとされています。燃焼効率にも優れており、安定した運転が期待できる点も特長のひとつです。
一方で、A重油と比較すると燃料単価がやや高く、消防法上の指定数量も少ないため、同じ設備条件では備蓄できる量に制限が生じやすいという側面もあります。
そのため、日常的な補給が可能な環境や、調達のしやすさを重視する施設に適した燃料といえるでしょう。
A重油は、重油の中でも粘度が低く、軽油に近い性質を持つ燃料です。非常用発電機においては、軽油と並んで多く採用されています。
軽油に比べてコストを抑えられる場合がある点に加え、消防法上の指定数量が多いため、より多くの量を備蓄できる点が大きな特長です。長時間の運転を想定する施設では、この備蓄性の高さが大きなメリットとなります。
一方で、A重油はガソリンスタンドでは取り扱われていないため、専門の燃料業者との契約が必要となるのが一般的です。平時から調達ルートを確保しておかないと、災害時に燃料を確保できない可能性もあります。
軽油とA重油のどちらを選ぶべきかは、施設の運用方針や災害時の対応体制によって異なります。
たとえば、都市部の中小規模施設や、緊急時の調達のしやすさを重視する場合には、ガソリンスタンドで入手可能な軽油が適しているケースが多いでしょう。
一方で、長時間の運転を想定している施設や、あらかじめ燃料供給業者との契約がある場合には、備蓄量を確保しやすく、コスト面でも有利なA重油が選ばれることがあります。
燃料の種類そのものだけでなく、災害時にも安定して供給できる体制が整っているかどうかも含めて検討することが重要です。
非常用発電機の燃料備蓄量を検討するうえで、ひとつの目安となるのが「72時間」です。これは災害時における人命救助の目安として知られる考え方ですが、非常用発電機においても「最低でも72時間稼働できる燃料を確保する」という基準として用いられることがあります。
ただし、実際の運用では、72時間分の備蓄だけで十分とは限りません。施設の用途や重要度によっては、それ以上の長時間運転が求められるケースもあります。たとえば、病院やデータセンターなどでは、電力の停止が長引くことで重大な影響が生じるため、より余裕を持った備蓄が望ましいでしょう。
一方で、燃料は無制限に備蓄できるわけではありません。消防法による規制やタンク容量の制約、コスト面の問題なども考慮する必要があります。そのため、「備蓄できる量」と「災害時に追加調達できる体制」の両方をバランスよく整えることが重要です。
非常用発電機の燃料は、使用していなくても時間の経過とともに劣化していきます。主な原因は、空気や水分との接触による酸化です。劣化が進むと燃料の性質が変化し、不純物(スラッジ)が発生することがあります。
この状態の燃料を使用すると、フィルターの詰まりや燃料系統のトラブルにつながり、非常時に発電機が正常に起動しないリスクもあります。
こうしたトラブルを防ぐためにも、燃料は定期的な管理と交換が必要です。交換の目安としては、理想的には1年に1回、最長でも6年に1回程度の全量交換がひとつの基準とされています。加えて、定期点検の際に燃料の状態を確認し、必要に応じて早めに入れ替えることが望ましいでしょう。
また、燃料の劣化を抑えるためには、直射日光を避けることや、水分や異物の混入を防ぐといった日常的な管理も重要です。
非常用発電機の燃料は、「種類の選定」「備蓄量の確保」「劣化管理」が重要なポイントです。軽油とA重油にはそれぞれ特徴があり、調達のしやすさを重視するのか、備蓄性やコストを重視するのかによって、適した選択は異なります。
また、燃料は時間の経過とともに劣化していきます。適切な点検や交換を行わなければ、非常時に発電機が正常に作動しないリスクもあります。いざというときに確実に稼働させるためには、燃料を「保管しているだけ」で終わらせず、定期的な確認と計画的な管理を行うことが重要です。
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