非常用発電機の負荷試験の方法や手順について解説。本負荷試験と模擬負荷試験の違いについても説明します。
非常用発電機は消防法などの規定により、定期的な点検、報告が義務付けられており1年に1回、予防のための保全策が講じられている場合は6年に1回の負荷試験または内部観察による点検を実施することが定められています。平成30年6月の消防法施行規則等の改正により、ガスタービン発電機については負荷試験の義務付けはなくなりました。
負荷試験は原則として30%以上の負荷運転を30分以上行う必要があります。これは、月次点検などで行う無負荷運転のみではディーゼルエンジン内に堆積されたカーボンが燃焼排出できないためです。
消防法において、総合点検の一部として非常用発電機の負荷試験が義務付けられています。そのため、負荷をかけない無負荷試験のみで点検を完了することはできません。
そもそも非常用発電機のほとんどはディーゼルエンジンが使われており、軽油でエンジンを動かして発電します。負荷試験では非常用発電機のマフラー内部などに堆積した未燃焼物やカーボンを排出することができます。
しかし軽い負荷でエンジンを稼働させると燃料が全て綺麗に燃えず、燃えかすが残ってしまいます。排気口やエンジン内に残ったままだと詰まりを起こし、故障の原因に。
加えて稼働時と無負荷試験では負荷が異なるため、実際の運転性能を確認することができない点も挙げられます。つまり非常用発電機の動作を確認するためには、負荷試験を行う必要があるということです。
非常用発電機の故障や不具合を予防するためにも、負荷試験を行いましょう。
負荷試験には非常時に電力を供給する設備を利用する本負荷試験と乾式ヒーター式の模擬負荷試験機を利用する模擬負荷試験の2つがあります。法律上はどちらの方法でも問題はありませんが、それぞれにメリット、デメリットがあります。
非常時に使用する設備を稼働させて負荷をかけるため、それぞれの設備が正常に作動するかどうかを、個別ではなく同時に点検することができます。
施設内に設置されている設備を利用するため、全館停電や瞬停が発生。作業は半日~1日に及ぶこともあり、停電が許されない施設もあるため実負荷試験ができない場合もある。
エレベーターやポンプへの電源供給があるため、長時間30%以上の負荷の維持が困難であり負荷率が安定しない。
稼働させる設備ごとに人員配置が必要となり大掛かりな試験になり、費用が高価になる可能性がある。
発電機の系統を一時的に切り離して専用の模擬負荷装置に接続して試験を実施するため、停電がなく、営業中に短時間(約2時間)で試験を完了することができる。
専用の試験機を利用して自由に負荷をコントロールしながら試験を行うため、確実に30%以上の負荷を長時間にわたってかけ続けることができる。
模擬負荷試験では、最低2名のスタッフで点検を実施することができるため、コストを抑えることができる。
消防設備や電気工作物を1つ1つ動かして同時に点検することができないため、各設備の点検は負荷試験とは別途で行う必要がある。
一般的な模擬負荷試験の流れは以下の通りです。なお、機器の種類や状態、設置場所や出力などにより作業工程や時間が変わることがあります。
非常用発電機の故障やトラブルを未然に防ぐためには、予防的な保全策が重要です。確認すべき項目や方法は機器によって異なるため、事前にチェックしておきましょう。以下で総務省消防庁が公表した予防的な保全策について紹介します。
なお、対象の非常用発電機に上記の装置が設けられていない場合は確認不要です。
非常用発電機の性能を維持するには、本負荷試験や模擬負荷試験だけでなく予防保全や内部観察などの法令に準拠した点検をまるごと依頼できる業者に相談することをおすすめします。
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